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古楽と古典技法(Alte-Manier/アルテマニア)

 2024年12月19日

先日、ICU(国際基督教大学)で催されたクリスマスコンサートに行ってまいりました。
荘厳な雰囲気の中で聴く16世紀ヴェネツィア音楽はとても素晴らしく、奏者の方の丁寧な解説のおかげで、初めての古楽をより楽しむことができました。
後日、調和のとれた演奏を思い返し、楽器の音色が人の声に聞こえたり、歌声が楽器のように聞こえたり…などと古楽の余韻を楽しんでいると、マイセン古典技法”Alte-Manier/アルテマニア”について考えが及びました。

アルテマニアと聞くと、どのようなものを想像されますか?
小さく細かく描かれている…点描のようなもの?
手間がかかっていそう、繊細な絵付け、といった感じでしょうか。
店頭であまり見ない…というイメージをもつ方も多いと思います。
手掛けることのできるペインターが少ない、完成まで手間のかかる様式という理由からかもしれません。

当校には、スーザン先生が描いてくれたアルテマニアのシリーズがいくつかあります。

大変細かく描かれているのは間違いないのですが、1cmにも満たない各パートの中で展開される色層の深さと全体の調和のとれた絵は、いつみても余韻が感じられます。
どの程度描き込むか、色層を深めるかなど、小さなモチーフほど調和のとれたバランスを実現させるのが難しいと感じます。

アルテマニアをクラスで取り上げることもあります。
こちら↓は、アルテマニアの中でも比較的描きやすいとされるモチーフだそうです。
ローズ&アイリス–アルテマニア様式
アルテマニアとしては比較的長めのラインで、ディテールの間隔が広めに構成されていることなどからでしょうか。
それでも、スーザン先生の実演をみているだけで、呼吸を忘れるのではないかと感じました(笑)。
それほど高い集中力が必要とされる技法です。

前述の奏者さんたちの演奏を聴いて、スーザン先生のような絵付師さんたちと共通する点があると思いました。人を感動させ、そこに至るまでの日々の鍛錬があるということです。

さらに…古楽というマニアックな世界に身を置くという点でも、もしかしたら共通しているのでは?と感じます。
マイセン工房は、1つの窯元で、大変幅広い作品群をもつ類まれな窯元です。
その窯元で、よりハイグレードなモチーフを手掛けたいと考えたスーザン先生はマニアックという表現以外、思いつきません(笑)。

コンサート終了後に古楽器について解説していただきました。
今ほど便利ではなかった時代です。
以前、スーザン先生から古のペインターたちがロウソクを使って筆を直していた話を聞いたことがあります….
当時の人々の理想を形にする探求心と創造力…見習わねば!と感じました。

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