スタッフブログ

『虫を描く女』━「昆虫学の先駆」マリア・メーリアンの生涯

 2026年3月28日

“マリア・シビラ・メーリアン”という17世紀に活躍した昆虫学の先駆者で銅版画家あり植物画家の名前を聞いたことはありますか?
私は、スーザン先生の作品名としてはじめて耳にしました。
大胆な構図、ソフトな色使いでも陰影の深みがあり、間違いなく絵画的なのですが、博物学に見られる精密さも感じられる….さらに、描かれるお花と昆虫のサイズ感が現実的ではない。
とにかく、当校では大人気のシリーズです。

スーザン先生からは、ヨーロッパの絵付師たちは、マリア・ジビーラ・メーリアン(当校ではスーザン先生の発音に倣い、このように呼称しています。)リスペクトを置き、忠実に再現することを忘れないものと聞いていました。
インターネットで原画を検索すると、かなり大胆な色使い…というか、スーザン先生の作品の印象とは大きく隔たる画がヒットします。スキャンした際のカラー調整が雑だったのか?など長い間疑問を持っていました。

つい先日、偶然マリア・メーリアンが”500マルク札の顔”だったことを知り、表題の本に辿り着きました。著者の中野京子さんはドイツ学者だそうで、ドイツマルク紙幣についてのエッセーを書くことになったのがきっかけで、メーリアンの生涯について上梓することになったそうです。

早速読んでみました。
スーザン先生から聞いていた、絵付師たちがマリア・ジビーラ・メーリアンをリスペクトすることになった経緯、色使いの隔たりについて、長年の疑問がすべて溶けました。
本文によると、メーリアンの原画はスーザン先生の作品のように、淡く繊細なグラデーションで描かれていることが分かりました。文中にあった”メーリアン独特の豊饒さ”という表現が腑に落ちました。
インターネットでヒットする画は、エッチングラインのみの画を廉価版として出版したことがあり、それを別の人が彩色したものだそうです…(残念….)
博物学的な精密さは、メーリアンが優れた昆虫学者で植物画家であり、そもそもそれが約束されていたような才能の持ち主だったと感じました。
その才能というのは、観察眼は元より、虫や花の成長をすべて見届け、観察し、記録するという忍耐強さを含みます。
晩年、スリナムへの渡航許可が何度も却下されても、繰り返し申請し、待ち続け「待つのは良薬」(この言葉は染みました!)とよく口にしていたそうですが、メーリアンのライフワークになぞらえているような言葉だと感じました。

お花と昆虫の少々矛盾を感じる?サイズ感、大胆な構図については、当時の流行したバロック様式の流れを汲んでいたり、メーリアン自身の情熱だったり..
なんといってもメーリアンのパイオニア精神から生まれたものだったのではないでしょうか!
1枚の紙の中に、虫の卵から芋虫、サナギ、蝶を描き収めたのは、メーリアンが最初で、現在の図鑑の起源とも言えるそうです。
本を読み進めていると、この構図でなかったら、500年経った今でも絵付師たちを魅了するものに、成り得なかったのではないかと感じられました。

メーリアンの父親が銅版の職人だったので、メーリアンの画は父親が彫っていたと思っていました…実際には、メーリアン自ら彫刻、エッチングをし、彩色していたそうです。
有名な『スリナム産昆虫変態図鑑』は、あまりの仕事量だったので彫刻師を雇ったそうですが、彩色は自身で行ったとのことでした。
国立国会図書館に銅版画があるそうなので、一度実物を見に行ってみようと思います。

『虫を描く女』「昆虫学の先駆」マリア・メーリアンの生涯
中野京子さん著 NHK出版新書
ぜひ読んでみてください!!


下の写真は、スーザン先生の作品の中でも大変人気のあるものですが、原画は1670年に出版されたメーリアンの処女作『初めての花束』の表紙を飾ったものだと判明しました!

スタッフブログ一覧へ戻る