スタッフブログ

金で描くことについて

 2022年5月9日

金彩は身構えてしまう、ちょっと苦手…とお声をよく耳にします。

確かに扱いにくいですし、高価だから失敗したくないものです。
それに素敵な絵を描くのに大変な労力と時間を費やした後ですから、魔法の箱に入れておいたら自動的に金がのっていた!というのを願いたいですよね(笑)

絵付けならでの工程とも言える金装飾は、工房(窯元)では専任のゴールドペインターが行うことが殆どだと思います。
マイセン工房では、絵のペインターが金で描く工程があります。
モダンアートなどに見られる人物の洋服や持ち物、アラビアンナイトの金のカーテンです。
製品のリムに見られる金装飾は、ゴールドペインターが行います。

余談ですが、スーザン先生ももちろん、マイセン工房で大変な数のモダンアート、特にアラビアンナイトを描いたそうです。当校にある数々の作品は、金のカーテンのデザインまでスーザン先生が考えてくれたものです。

当校で使用する金の種類、扱い方、描き方などは、スーザン先生の知識や経験に基づいています。
スーザン先生は、カラーと金を同じように扱っています。
修正するときも筆とターペンターです。アルコールなどは使用しません。
アドバイスはただ1つ。金は色が濃いので目が疲れやすい。ちゃんと休憩するように、です。

スーザン先生にとってはカラーと変わらなくても、私たちには少々付き合いにくい印象がありますよね。特に縁の金装飾は細く繊細で、描きにくい….

そこでスーザン先生直伝の内容と、普段日本人講師が行っていることなどをまとめてみました。

  • おすすめの金の種類
    純度が高めほうが固まりにくく、描きやすいと思います。
    いくつか純度違いで試したことがありますが、やはり純度高めが最も効率よく作業が進み、焼き上がりの発色も良いです。
  • 描くときの金の状態
    クリーミーな状態がベストです。(ディックオイルでカラーパウダーを溶いたときとほぼ同じ)
    パレット上で山型にまとめておくのがポイントです。金が固まって描きにくくなるのが防げます。(表面は膜が張ったようになります)
    金の色は赤褐色ではなく、チョコレート色になっている状態がおすすめです。
  • 金の調整について
    金の状態に応じて調整が必要になる場合があります。
    *金が容器の中で固くなってしまった場合*
    金油を数滴入れてしばらく放置した後、よく混ぜてください。
    このときにクリーミーな状態になればよいのですが、そうならない場合は、下記2つのいずれかの方法を試してみてください。(水っぽくなってしまった場合は、揮発を待ってください)

    *ネバっとする場合*
    ターペンターを少量加えて、よく混ぜてください。
    クリーミーな状態になればOKです。

    *なかなか良い状態がつくれない場合*
    たまにあります(笑)そんなときは少量のディックオイルを入れています。
    純度が下がるのでは?と質問されることがありますが、ターペンターや金油で薄めるよりも濃い色を保っていて、ちょうどよい描き心地です。
    特に筆が滑りやすいハンドルのエッジ、レリーフの上に描くときにおすすめです。
  • 実際に描くとき
    パレット上に山型にまとめた状態からスタートです。
    1. 筆にターペンターを少量つける。
    2. 山の下のほうからすくうようにして金をとる。
    3. 筆に金をよく馴染ませる。
    筆がパレットの上で滑りにくいようなら、再度1.を行い、よく馴染ませてください。

    *留意点*
    集中していると、いつのまにか筆に金を入れすぎてしまいがちです。
    筆が重くなり、スムーズに描くのが難しくなります。
    含ませ過ぎてしまった…と感じたら、筆を軽く洗うことをおすすめします。
    また、時間の経過で金の粘度が増してきた場合、筆につけるターペンターの量を増やしてみてください。
    はじめは1度だったのを2度にするというものです。
    よく馴染ませることを忘れないでください。
  • ペンを使う場合
    遅乾性のオイルまたは金油を使って、筆で描くときより少し緩くします。
  • 縁のラインの金
    当校ではロクロを使って入れています。
    ロクロ用の細長い筆に金を含ませるとき、少しターペンターを多めにして、よく馴染ませます。
    どのあたりに入れるのかという質問をいただくことがあります。
    下の画像をみてください。スタビロで示しました。どのような形の白磁でも直線にみえるので、筆を置きやすいです。

工房では、大きな筆でクルクルと縁のラインを入れるようですが、個人ではそうはいきません….
1枚からでも入れてしまいたいものです。
当校にはいくつかロクロがありますが、一番簡素なタイプで金を入れている様子がこちらです。→公式インスタグラム

  • 金の修正
    スーザン先生のクラスでは、カラーと同様、筆とターペンターで修正します。アルコールや綿棒などは使用しません。
    ターペンターと筆を使えば、綿棒の繊維を気にすることなく、微細な修正ができます。
    また、アルコールが流れてしまい、修正箇所以外に影響してしまうことがありません。
    広範囲の修正については、アルコールや綿棒などを使用したほうが効率がよいかもしれません。
  • 残った金の保管
    長期間使用する予定がない場合は密封容器、比較的すぐに使用する場合はパレットごとタッパーなどに入れて保管しています。
    いずれの場合も、埃が入らないようになっていれば問題ないと思います。
    密封容器は、金に含まれる溶剤などで腐食されないようなものがよいと思います。

色々な情報があると思います。
ご自身にとって一番親しめる方法をみつけて、上絵付けの最終仕上げである金彩を身近に感じていただけると幸いです。

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