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マイセンとヘキストの繋がりと違いについて

 2020年4月26日

異なる作風でありながら、マイセンとヘキストは技術的に共通している点が多く、基本的に使用されている筆やオイルなどの道具に違いはありません。
実際、スーザン先生のロイヤルコースでは、マイセンだけではなくヘキストも登場します。さらに日本人講師のマイセンを描くコースヘキストを描くコースは、同じ日に行われます。

どことなく違う、でも似ているマイセンとヘキスト。
まずマイセンとヘキストの繋がりについてお話しします。

マイセンはヨーロッパで最初に白い磁器を生み出し、1710年に開窯。その36年後にヘキストが誕生しました。マイセンは、歴史ある名窯が数多く存在するドイツにおいて最も古く、ヘキストはそれに続く窯です。

当時ヨーロッパで製造されていたのは軟質磁器で、ひびが入りやすく、お茶が漏れてしまうなどのトラブルがよくあったそうです….
マイセンの硬質磁器の成功は、当時のヨーロッパではセンセーショナルだったのでは!と想像します。

マイセンには腕に覚えのある画家が集まり、たくさんの図案が考案されました。
マイセン開窯を指揮したアウグスト強王は、技術やノウハウの漏洩防止に努め、厳重に管理したそうですが完璧にはいかず…。
当時、白い黄金といわれた磁器製品の開発が盛んだったヨーロッパでは、職人の引き抜きも少なくなかったようです。

1700年初頭に誕生した数々のドイツの窯の製品がどことなく似ているのは、こういったことからではないかと想像します。

実はスーザン先生、マイセンの総統がヘキストの立て直しに関わることになった際、一緒に携わってくれないかと言われ、マイセンからヘキストに移りました。言わばスカウトですね(笑)

スーザン先生はヘキストにおいて、ペインター職だけはなく、新しい図案の開発やペインターの教育にも携わっていました。
ヘキストのフルーツブーケは、スーザン先生考案の図案なんですよ!)
そんな経歴を持つスーザン先生に聞いた、マイセンとヘキストの絵付けとしての違いは…

「ヘキストのほうが色がディープかしら…」
マイセンの色が浅い、というものではなく、調合師としての観点から出たコメントです。スーザン先生は、絵付け用絵の具の調合師の国家資格を持っています。またヘキスト窯で唯一の調合師でした。
当教室で使用する色は、スーザン先生のオリジナルレシピによるものです。色のグループとして”マイセンカラー”と”ヘキストカラー”があります。
便宜上グループ分けされているだけで、描く際には、すべての色が使用の対象になります。
例えばマイセンを描く際、トラディショナルフラワー以外は、ヘキストカラーが頻繁に登場します。ヘキストを描く際にも、頻度は低めですがマイセンカラーが登場します。

トラディショナルフラワーは、当教室で基本的モチーフとしているものですが、マイセンの歴史においては、比較的新しいモチーフなんです。個人的な印象ですが、他のモチーフと比較して彩度が高めと感じます。

「ヘキストはよりグラフィカルかしら…」
実際に同じ花を描いてみると、スタイルの違いがよくわかるのですが、言葉にするのは少々難しく…余韻を残さず、きちんと描くということでしょうか。

ヘキストは数々の不運に見舞われ、順当な製品の供給が難しかったために、”幻の名窯”といわれていますが、マイセンと並ぶ名窯です。
日本でも、パープル一色で描かれた風景やフラワーブーケ、フィギュリンが人気を博したと記憶しています。

時代の移り変わりはありますが、これからも素晴らしい名窯の技術やセンス、知識を途切れさせることなく伝えていかなくては…と感じています。

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